浅葱色の計算用紙

数学(広義)を扱っています。

円板の慣性モーメント

私は大学で物理を取っている。その授業で、期末試験について先生はこんなことを言った:

「慣性モーメントを計算する問題があります。ただし、出題は円板に限定します。

そこで私は思った。任意の回転軸に対する円板の慣性モーメントを先に求めておけばこの問題で無双できるのではないかと。

問題:

半径\(R\)、質量\(M\)の円板の慣性モーメントを求めよ。ただし、回転軸は\(\mathbb{R^3}\)内の任意の直線をとりうるものとする。

解答:

求める慣性モーメントを\(I\)とする。

回転軸が中心を通らないとき、回転軸と中心との距離を\(d\)、回転軸を平行移動させて中心に移動させたときの慣性モーメントを\(I_G\)とすると、

\(I=I_G+Md^2\)

 の関係があるので、以下では回転軸は円板の中心を通るものとする。

また、円板と回転軸を適宜平行移動・回転させることにより、円板は\(xy\)平面上で原点を中心とする半径\(R\)の円、回転軸は\(xz\)平面内にあるものとしてよい。

このとき、\(x\)軸の正の方向と回転軸のうち\(z\geq0\)の部分がなす角を\(\theta (0\geq \theta < \pi) \)とする。

ここで、円板上の点\(P(x,y,0)\)とこの直線との距離を求める。直線上の点を\( Q(t\cos{\theta}, 0, t\sin{\theta}) \)とし、\(PQ\)が最小になる\(t\)を求めればよい。

このとき、\(\overrightarrow{PQ}\)は直線に垂直であるから、

\(\overrightarrow{PQ}\cdot\overrightarrow{OQ}=0\)

すなわち\(t\cos{\theta}(t\cos{\theta}-x)+t^2\sin^2{\theta}=0\)となる。

これを整理すると\(t^2-xt\cos{\theta}=0\)

よって\(t\neq0\)より\(t=x\cos{\theta}\)となる。

このとき\( Q(x\cos^2{\theta}, 0, x\sin{\theta}\cos{\theta}) \)であるから、

\( \begin{eqnarray} PQ&=& \sqrt{x^2(\cos^2{\theta}-1)^2+y^2+x^2\sin^2{\theta}\cos^2{\theta}} \\ &=& \sqrt{x^2(\cos^2{\theta}-1)^2+x^2(1-\cos^2{\theta})\cos^2{\theta}+y^2}\\ &=& \sqrt{x^2(1-\cos^2{\theta})+y^2}\\ &=& \sqrt{x^2\sin^2{\theta}+y^2} \end{eqnarray} \)

となる。

また、\( (x,y,0) \)周辺の微小部分(面積\(dS\) )の慣性モーメントは、

\( M\cdot\frac{dS}{\pi R^2}\left(\sqrt{x^2\sin^2{\theta}+y^2}\right)^2\)

\(=\frac{M}{\pi R^2}(x^2\sin^2{\theta}+y^2) dS \)

となる。

 

全体のモーメントを求めるには、これを円板全体で積分すればよい。実際に積分を行うと、

\( \begin{eqnarray} I&=&\int_{-R}^{R} \int_{-\sqrt{R^2-x^2}}^{-\sqrt{R^2-x^2}} \frac{M}{\pi R^2}(x^2\sin^2{\theta}+y^2) dy dx \\ &=& \frac{M}{\pi R^2} \int_{0}^{R} \int_{0}^{2\pi} r^2(\cos^2{\phi}\sin^2{\theta}+\sin^2{\phi})r d\phi dr \\ &=& \frac{M}{2\pi R^2} \int_{0}^{R} \int_{0}^{2\pi} r^3( (1+\cos{2\phi})\sin^2{\theta}+(1-\cos{2\phi})) d\phi dr \\ &=& \frac{M}{2\pi R^2} \int_{0}^{R} \int_{0}^{2\pi} r^3( (\sin^2{\theta}+1)+(\sin^2{\theta}-1)\cos{2\phi}) d\phi dr \\ &=& \frac{M}{2\pi R^2} \int_{0}^{R} 2r^3\pi(\sin^2{\theta}+1)dr \\ &=& \frac{M}{2\pi R^2}\cdot \pi(\sin^2{\theta}+1) \cdot \frac{R^4}{2} \\ &=&\frac{1}{4}MR^2(\sin^2{\theta}+1) \end {eqnarray}\)

となる。

なお、この式に\( \theta=\frac{\pi}{2} \)を代入すると\( I=\frac{1}{2}MR^2\)、\( \theta=0 \)を代入すると \( I=\frac{1}{4}MR^2\)となり、よく知られた結果と一致する。

よって、回転軸が円板の中心を通らない場合も考慮すると、回転軸と中心との距離を\(d\)、円板と回転軸がなす角を\(\theta\)とすると、その慣性モーメントは

\( \frac{1}{4}MR^2(\sin^2{\theta}+1)+Md^2 \)

となる。